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猫のリンパ腫の抗がん剤治療のプロトコール。UW-25とNCSU。

2018年4月4日

 

猫のリンパ腫の抗がん剤治療では複数の種類の薬を使うのですが、どの薬を使い・どんな順番で投与するかなどによって効果が変わると言われています。

効果が高い投与方法を世界中の医療機関が研究しているのですが、
いくつか実績のある方法が知られており「プロトコール」と呼ばれています。

猫のリンパ腫の治療で高い実績があるプロトコールは2つ(2018年4月現在)

  • UW-25
  • NCSU

それぞれのプロトコールでは、どの薬をどんな順番でどのような時間軸で使うのか、この記事でまとめておきます。

 

UW-25

現在リンパ腫に対してもっとも効果があり反応が良いとされているウェスコンシン大学で考案されたプロトコール。
完全寛解率は68%、奏効率は約94%、奏功期間中央値は約10か月、生存期間中央値は約14ヶ月。

薬剤の効果が落ちないように、5種類の抗がん剤を順番に使用します。

第9週まではほぼ毎週投与、その後は2週間に1回投与します。
第4週までのプレドニゾロン(ステロイド)は毎日服用。
第4週に登場するドキソルビシンがもっとも効果の強い薬です。

第25週目に再発が認められなければ、治療は終了となります。

  • 第1週
    L-アスパラギナーゼ、ビンクリスチン、プレドニゾロン
  • 第2週
    サイクロフォスファミド、プレドニゾロン
  • 第3週
    ビンクリスチン、プレドニゾロン
  • 第4週
    ドキソルビシン、プレドニゾロン
  • 第5週
    血液検査のみ
  • 第6週
    ビンクリスチン
  • 第7週
    サイクロフォスファミド
  • 第8週
    ビンクリスチン
  • 第9週
    ドキソルビシン
  • 第11週
    ビンクリスチン
  • 第13週
    サイクロフォスファミド
  • 第15週
    ビンクリスチン
  • 第17週
    ドキソルビシン
  • 第19週
    ビンクリスチン
  • 第21週
    サイクロフォスファミド
  • 第23週
    ビンクリスチン
  • 第25週
    ドキソルビシン

 

NCSU

UW-25と変わらないくらいの効果があるとされているノースカロライナ州立大学で考案されたプロトコール。

UW-25より1種類多い、6種類の薬を中心に組み合わせます。

基本的に第25週で治療は終了します。
第27週以降も完全寛解が維持できれば、2週毎に同じプロトコールを6か月間継続。
治療開始から1年後にも完全寛解が維持できている場合は3週間毎に同様のプロトコールを6か月間継続。
その後は定期健診のみです。

 

導入期
  • 第1週
    L-アスパラギナーゼ、ビンクリスチン、プレドニゾロン
  • 第2週
    サイクロフォスファミド、プレドニゾロン
  • 第3週
    ビンクリスチン、プレドニゾロン
  • 第4週
    メソトレキセート、プレドニゾロン
  • 第5週
    ビンクリスチン、プレドニゾロン
  • 第6週
    サイクロフォスファミド、プレドニゾロン
  • 第7週
    ビンクリスチン、プレドニゾロン
  • 第8週
    ドキソルビシン、メトクロプラミド、プレドニゾロン
  • 第9週
    ビンクリスチン
維持期
  • 第11週
    サイクロフォスファミド
  • 第13週
    ビンクリスチン
  • 第15週
    メソトレキセート
  • 第17週
    ビンクリスチン
  • 第19週
    サイクロフォスファミド
  • 第21週
    ビンクリスチン
  • 第23週
    ドキソルビシン
  • 第25週
    ビンクリスチン

 

レスキュープロトコール

UW-25やNCSUで治療しても効果が得られない場合は、
レスキュープロトコールと呼ばれる別のプロトコールで治療が行われます。

レスキュープロトコールについては以下のサイトで海外論文へのリンクが紹介されていますので、参考にしてみてください。

マミー動物病院 リンパ腫のレスキュープロトコール

 

副作用などの注意事項

  • ドキソルビシン
    時間をかけて点滴で投与しますが、点滴中に暴れて留置針がずれてしまうと危険です。皮膚下にドキソルビシンが漏れると、重度の皮膚障害が起こります。
    投与に時間を要するので、半日~1日病院に預けることになります。
    副作用は胃腸障害、骨髄抑制、脱毛、アレルギーなどがあります。

  • ビンクリスチン
    これも血管外に流出すると周辺組織が壊死する危険性があります。
    副作用は便秘、骨髄抑制などがあります。

  • サイクロフォスファミド(シクロホスファミドなどとも呼ばれます)
    副作用として出血性膀胱炎が起こることがあります。その他胃腸障害、骨髄抑制など。
    治療後は薬を排泄するために、十分に水分を飲ませて頻繁に排尿させましょう。そのため利尿剤も投与します。

また、これらの抗がん剤では共通して下痢・嘔吐の症状が出やすいです。

 

排泄物の処理に注意

治療中の猫の排泄物には、微量の抗がん剤が出ることがあります。

抗がん剤は人間の身体にも悪影響がありますので、素手では触らない、すぐに処理してあげるなどの対応をすればOKです。
過剰に怖がる必要はありませんが、サイクロフォスファミドの投与後は特に注意しましょう。

多くの抗がん剤は48時間以内に排泄が終わるので、その間に排泄物を処理する場合には注意した方が良いですね。

 

 

以上、プロトコールや注意事項を紹介してきましたが、疑問点があれば必ず腫瘍専門医の獣医師さんに質問しましょう。

私も自分なりにいろいろと調べてみましたが、
猫の腫瘍の医療情報は専門的すぎて、日本語で書かれたサイトで調べるだけでは正確な情報は得られません。
海外サイトからも探す必要があります。

私が腫瘍専門医さんからいろいろなお話を伺った記事はこちらにも書いていますので、参考にしてみてくださいね。

クローナリティ解析(遺伝子検査)の結果を受けて治療方針を決定。専門医のセカンドオピニオンも受けました。

 

 

参考サイト

ふく動物病院 犬。猫のリンパ腫に関するよくある質問

ガーデン動物病院 猫の病気 腫瘍科

 

 

 

 

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