1、2歳の若い猫から高齢の猫まで、年齢に関わらず発症する可能性が高いのが『尿路結石症』(尿石症)です。
猫の祖先は、砂漠地帯で生活しているリビアヤマネコと考えられています。
そのため、猫は水分の摂取量が少なく、おしっこをできるだけ濃縮して排出できるように進化してきました。
一方で、おしっこは腎臓で濃縮されているため、猫の腎臓には常に大きな負担がかかります。
猫が泌尿器系の病気にかかりやすいのはこのためです。
ここでは、泌尿器系の病気のおおもとの原因ともいえる『尿路結石症』(尿石症)について詳しく解説していきます。
尿路とは
尿は、左右にある腎臓で作られ、それぞれの腎臓にある尿管を通って膀胱に一時的に溜められます。
膀胱に溜まった尿は、尿道を通って体外に排出されます。
尿路とは、腎臓から尿道までの尿が体外に排出される通り道のことを指します。
また、腎臓から尿管までを上部尿路、膀胱から尿道までを下部尿路と言います。
引用元:nekopedia
尿路結石症(尿石症)とは
『尿路結石症』とは尿路のどこかに結石や結晶ができて排尿障害を起こしてしまう病気で、結石や結晶ができている場所によって名前が区別されています。
腎臓であれば腎(臓)結石、尿管であれば尿管結石、膀胱であれば膀胱結石、尿道であれば尿道結石と呼ばれます。
結石には、いくつか種類があります。
中でも代表的なものに、ス卜ルバイト結石とシュウ酸カルシウム結石があります。
ス卜ルバイト結石(リン酸アンモニウムマグネシウム)
マグネシウムを主成分とする最もよく見られる結石です。
尿pH(ペーハー)がアルカリ性に偏ってしまった場合に作られやすいです。
食事療法により溶かすことができます。溶けるまでに平均4~6週間、それ以上かかる場合もあります。
比較的1〜6歳頃の猫に多いです。
シュウ酸カルシウム結石
カルシウムを主成分とする近年増加してきている結石です。
尿pH(ペーハー)が酸性に偏ってしまった場合に作られやすいです。
食事療法により溶かすことはできません。
比較的7歳以降の高齢猫、11歳以降の老齢猫に多いです。
尿路結石症は性別に関係なく発症しますが、尿道が太く短いメスのほうが外部から細菌が入りやすく結石ができやすいです。
一方、オスは結石ができにくいものの、尿道が細くて長いため結石が詰まりやすい傾向にあります。
症状
尿路に結石ができたとしても、必ずしも症状が出るとは限りません。
というのも、尿管は左右に2つあるため、一方に結石ができても症状が出ないことが多いです。
その一方で、尿道は1つしかないので、必ず何らかの症状が出ます。
尿路結石症の症状としては、以下のようなものが挙げられます。
- 頻繁にトイレに行くようになる
- ピンク~赤みがかった血尿が出る
- トイレにいる時間が長く、おしっこの体勢になっているのになかなかおしっこが出ない
- おしっこをする時に、痛そうに鳴き声をあげる
- トイレ以外の場所でおしっこをする
- 一回のトイレでおしっこが少ししか出ない(あるいは、全く出ない)
- 嘔吐する
- 元気・食欲がなくなる
おしっこが全くでない、嘔吐する、元気・食欲がなくなっている場合には、特に注意が必要です。
腎不全や尿毒症を発症している可能性があるため、命にかかわります。
様子見をせず、早急に動物病院に連れていき診察を受けましょう。
診断方法
尿検査
専用の試験紙で、尿の濃さ、尿のpH(酸性・アルカリ性のかたより具合)の確認を行います。
顕微鏡で、結石の種類の特定と、細菌がいないかをチェックします。
血液検査
腎臓の機能にどの程度障害が及んでいるかチェックします。
尿路結石以外の病気が発生している可能性はないか確認します。
X線検査
結石の数や大きさ、形、おおよその位置を確認します。
結石の中でも、ストルバイトやシュウ酸カルシウムは、X線検査で確認できます。
超音波検査
結石の正確な位置の把握と、膀胱に尿がどの程度溜まっているか、腎盂(ジンウ)や尿管内での尿路の拡張や閉塞が起きていないかを確認します。
超音波検査では、X線検査では確認できない結石が確認できる場合があります。
治療
結石の種類や大きさ、位置や症状も様々なので、その状況に応じた治療が必要になります。
ここでは大まかな治療内容を見ていきます。
結石が大きい場合
手術をして結石を摘出します。
結石が小さい場合
結石を溶かす療法食を与えたり、輸液療法を行います。
結石が詰まっておしっこが全く出なくなっている場合
緊急処置が必要になります。
カテーテルという細いチューブを尿道に挿入して、尿道や膀胱を洗浄し、詰まりを解消します。
おしっこが全く出なくなってから24時間以上経つと腎不全を発症し、治療せずに放っておくと72時間以内に命を落とす危険性があります。
細菌感染や炎症がみられる場合
抗生物質の投与が行われます。
血尿や炎症がみられる場合
消炎止血剤の投与が行われます。
排尿痛がみられる場合
鎮痛剤の投与が行われます。
予防と対策
尿が濃くならないようにすること、尿が長い時間膀胱にとどまらないようにすることが大切です。
そのためには、猫がいつでも好きな時に水が飲める、おしっこを快適にできる環境を整えましょう。
トイレを清潔に保つ
トイレが汚いと、猫がおしっこを我慢してしまうことがあります。
長い時間膀胱におしっこが溜まっていると、結石ができやすくなります。
猫がいつでも気持ちよくトイレを使えるよう清潔な状態を保ちましょう。
十分に水分を与える
たくさん水分をとることで、おしっこの濃度が薄まりますしトイレに行く回数も増えます。
なかなか水を飲まない場合には、以下のような対策をとってみましょう。
猫がよく通るところに、数か所水飲み場を設ける
多頭飼いの場合には、少なくとも頭数以上の水飲み場は設けましょう。
猫が高齢であれば、お気に入りの場所やよく寝ている場所のそばに設けるといいでしょう。
こまめに新鮮な水に取り換える
水の温度は、ぬるめのお湯を好むことが多いです。容器もこまめに洗い、清潔にしましょう。
水を入れる容器を変えてみる
陶器が好きな猫が多いです。浅く広い容器だと、髭が当たらず飲みやすくなります。
蛇口からのように流れている水しか飲まない場合には、循環式の給水器を試してみるのもいいかもしれません。
ドライフードからウェットフードに変えてみる
水分が1割ほどしかないドライフードから水分8割のウェットフードに変えるだけで、自然と無理なく水分をとることができます。
適度に運動をさせる
室内で飼っている場合には、特に運動不足になりがちです。
運動不足になると水分を取らなくなりがちですし、肥満を引き起こします。
(逆に、肥満が運動不足を引き起こしているとも言えますし、卵が先かヒヨコが先か状態ですが…。)
キャットタワーや家具の配置を工夫して高低差をつけたり、オモチャで遊ばせたりしましょう。
定期的に尿検査を受ける
頻尿や血尿などの症状が出ていなくても、尿検査によって気づきにくい異常を見つけることができます。
特に発症後は、再発していないかのチェックにもなりますし、万が一再発していても早期に発見できます。
半年から一年に一度は、動物病院で尿検査を受けましょう。
定期的に水分摂取量と尿のチェックを行う
自分が飼っている猫が、普段どれくらい水分をとっているのか、おしっこの頻度や色、量はどうかについて把握しておくようにしましょう。そうすることで、何か変化があった時に早く気づくことができます。
特に冬は寒さから運動量も水分摂取量も減る傾向にありますので、いつも以上に気にかけるようにしましょう。
食事の管理を行う
猫は尿路結石にかかるリスクが非常に高いため、避妊・去勢手術後は、ミネラル成分を調整したpHバランスが考慮されたフードに切り替えましょう。
特に発症後は、再発を防ぐためにも食事管理は非常に重要です。
獣医師と相談して、最適な食事を与えるようにしましょう。
尿路結石は、体質や生活習慣に深く関係していて、一度発症すると再発することが多い病気です。
しかしながら、予防と対策を講じていれば、発症を未然に防いだり早期に発見したりできます。
日頃から、猫の行動を観察し気を配るように心がけましょう。
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