ネコの病気

猫は緑内障で失明する ~猫の病気・けが症状別対処法~

2016年10月27日

 

緑内障は、人の目の病気としてもよく耳にする病名ですよね。

犬ほどではありませんが、猫も緑内障にかかることがあります。

 

人の場合は、目のかすみや視野が狭くなるなどの自覚症状から早期発見できるので、すぐに眼科へ行って治療すれば失明には至らずに済むことが多いです。

一方、猫は自分で症状を訴えることができないので、症状がかなり進行してしまってから治療を開始するケースが多く、失明するリスクが非常に高いです。

そのため、猫の目の病気は早期発見・早期治療が重要ですが、その中でも、緑内障は特にスピードが求められます。

 

では、緑内障とは具体的に、

どのような病気で、

どのような分類があって、

どのような症状になり、

どのような治療が必要なのでしょうか。

 

この記事では、その4点について詳しく解説します。

 

緑内障はどのような病気なの?

緑内障は、眼球内部の圧力(眼内圧)が上昇することで、視覚にとって非常に重要な視神経を圧迫し、短期間のうちに高い確率で失明に至ります。

猫の目の構造

引用元:マスダ動物病院

視覚を保つために眼球が丸いふくらみをおびるには、平均的な眼圧15~25mmHg が必要です。

眼圧は、毛様体という組織で作られる前眼房水という液体が、瞳孔を通って、前眼房(角膜と水晶体のスペース)を満たし、隅角(虹彩の基部)にある櫛状靱帯(くしじょうじんたい)から排出されて、一定の圧力を保っています。

この排出がうまく行われなくなると、前眼房水が滞留し、眼圧が上昇してしまいます。

前眼房水は眼圧を保つことだけではなく、角膜と水晶体に栄養を供給すると同時に、老廃物を排出する役割も担っています。

 

緑内障には様々な種類があります

緑内障は、原発性と続発性、閉塞隅角と開放隅角、急性と慢性といった様々な分類に分けられます。

 

・続発性緑内障

 ほとんどの猫はこのタイプの緑内障になります。

<主な特徴>

 他の眼の病気(ぶどう膜炎・腫瘍・眼内の出血・水晶体脱臼など)にかかると、その後、二次的に発症する緑内障です。

 他の病気に続いて発症するので、続発性と呼ばれています。

 先に発症した他の眼の病気を早期に発見し治療することができれば、続発性緑内障の予防も可能です。

 

・閉塞隅角緑内障

 隅角が狭く閉塞して、前眼房水がうまく排出されず眼圧が上昇してしまうことが原因で起こる緑内障です。

 

・開放隅角緑内障

 隅角の広さは問題ないのですが、うまく機能しておらず、排出に支障をきたすことが原因で起こる緑内障です。

 初期段階では眼圧の上昇は軽度ですが、進行すると眼圧がどんどん上昇していき、最終的に閉塞隅角緑内障になります。

 

・急性緑内障

 急性的に発症する緑内障です。

 眼圧が40〜60mmHg以上と異常に高くなります。

 眼圧は40mmHg以上の状態が48〜72時間続くと失明してしまうため、痛みなどの症状が激しく出ます。

 

・慢性緑内障

 慢性的に発症する緑内障です。

 眼圧は30〜40mmHg程度で穏やかに進行するので、深刻に悪化するまで飼い主さんが症状に気づきにくいです。

 特に問題がないように思えても定期的に健康診断を受けて、眼圧検査を行い早期発見に努めましょう。

 

・原発性緑内障

 先天的・遺伝的に隅角に異常があるときに、突発的に発症します。

 片方の目が原発性緑内障になった場合は、6ヵ月前後でもう片方の眼も50%の確率で緑内障を発症します。

 猫はこのタイプの緑内障になることはほとんどありません。

 

緑内障になると、どのような症状がでるの?

猫が緑内障になると、以下のような症状が現れます。

・眼球が膨張している

・左右の瞳孔の大きさが違う

・結膜が充血している

・角膜が白っぽく濁っている

・目をショボショボさせ、涙を出している

・目を痛がる

このような症状に気づいたら、すぐに病院へ連れて行ってあげましょう。

 

どのような治療を行えばいいの?

緑内障は、根本的に完治することが非常に難しい病気です。

そのため、多少でも眼圧を下げて痛みを軽くするのが、治療の趣旨になります。

 

眼圧を下げるために必要なのは、増えすぎてしまった前眼房水が作られる量を減らすことと、きちんと排出されるようにすることです。

治療法としては、大きく分けて、内科療法と外科療法があります。

治療法は、緑内障の分類(原発性か続発性かなど)や、視力の有無によって変わってきます。

基本的に、視力がまだある場合には内科療法から始めますが、長期間の治療になると内科療法だけでは限界があるので、最終的には外科療法が必要となるケースが多いです。

 

◆内科療法

 飲み薬や目薬で、前眼房水の生産を抑えたり、排出を増やしたりして、眼圧を下げます。

 効果には、個体差や症状によって違いがあるので、定期的に眼圧を実際に測り、効果が出ているかをチェックする必要があります。

 

 ちなみに、眼圧は、個体差もあれば、検査器具、測定する時間帯でも変動します。

 時間帯としては、朝が一番高く、夕方が低いです。

 

 猫の場合、眼圧が40mmHg以上あると、緑内障と診断される傾向にあります。

 しかし、正常時の平均的な眼圧が15~25mmHgなことを考えれば、25mmHgを超えた時点で、緑内障を予防する上でも点眼を始める必要があります。

 また、健康な通常時の眼圧が低めの猫であれば、基準を下回っていても、緑内障を発症しつつある可能性があります。

 定期検診などで、自分の飼っている猫の健康時の眼圧を知っておくといいですね。

 

◆外科療法

 視力が残っている場合には、眼圧を下げて視覚を保つことが目的ですが、既に視力を失ってしまった場合には、眼圧を下げて痛みを取り除くこと、眼球を残すことが目的になります。

 また、こういった手術は、繰り返し何度も行う必要があったり、手術後も点眼を継続する必要があったりします。

 残念ながら眼球の維持が難しくなった場合には、眼球摘出、義眼という選択を迫られることになります。

 

 ・レーザー毛様体凝固術

  前眼房水を作っている毛様体を焼き一部を破壊することで、前眼房水が増えすぎないよう生産を抑える方法

 ・前房シャント術

  前眼房内部にインプラントチューブをいれることで、新たに排出路を設け、前眼房水の排出を促す方法

 ・虹彩の切除手術

  閉塞されている隅角を開き、排出量を増やす方法

 ・管錐術

  眼球の外部に新たに前眼房水を排出する流出路を作る方法

 ・眼球の摘出

  視力を失い痛みも解消されない場合、眼球を摘出して、瞼を縫いあわせる

 ・シリコン義眼挿入術

  眼球内の組織を取り除き、シリコン製の義眼を入れる

  視力を失ったケースでの眼球摘出以外の方法として、近年多く採用されている方法

 

 ここに挙げた外科療法は、ほんの一部にすぎません。

 かかりつけの獣医師と相談して、その猫に適した治療法を判断しましょう。

 

獣医学は日々進歩しています。

現在では進行した緑内障を治すことは難しいですが、将来はより安全で効果的な治療法が確立されるでしょう。

 

いずれにしても、猫の目の病気は早期発見・早期治療が重要なことには変わりないので、飼い主として猫の異常にいち早く気づいてあげて、即座に病院で診てもらうことを心がけていきたいですね。

 

 

 

 

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