ネコの病気

猫の角膜炎は油断できない ~猫の病気・けが症状別対処法~

2016年11月13日

 

猫の目の病気で一番多いのが、実は「角膜」に関わる病気です。

動物病院で行われる目の診察や治療の約4分の1を占めるとされています。

 

猫の目は、顔の大きさに対して、だいぶ大きく感じますよね。

にもかかわらず、ネコどうしで遊び始めると接近戦が繰り広げられることもよくあり、目を怪我することが多いんです。

右目だけ閉じるミック

ミックとジャガーも、完全な室内飼いですが、軽いじゃれあいから本気モードのバトルになって、気づくと、片目を閉じて痛そうにしてるんです。

この写真は、角膜を傷つけてしまい痛そうに目を閉じているミックです。

(関連記事:ミックの目に異変!?)

 

角膜は、眼球の一番外側の表面にあるので、外部からの刺激を直接受ける部分です。

それで、真っ先に怪我するのが角膜というわけです。

 

ここでは、角膜の特徴や役割、角膜に関わる病気と治療法について、詳しく解説します。

 

角膜とは

猫の目の構造 角膜

引用:プリモ動物病院 http://central.jprpet.com/clinic/Ophthalmology/

 

角膜の特徴

  • 角膜は、目の表面の透明な膜のことで、身体の中で完全に透明な組織というのは、角膜しかありません。
  • 眼球全体の20%を占めていて、角膜の厚さは、0.5~0.8mmです。
  • 角膜と水晶体の間に前眼房水が満たされていることで適度な眼圧が保たれ、角膜は、滑らかな半球形を保っています。
  • 角膜には無数の知覚神経が集中しているので、刺激を受けると激しく痛みます。
  • 角膜には血管がないので、涙や角膜と水晶体の間にある前眼房水から栄養を取りこんでいます。
  • 角膜は、外側から、角膜上皮、角膜固有層(角膜実質ともいう)、デスメ膜、角膜内皮の4つの層でできています。
    その中で、角膜固有層(角膜実質)は、角膜の厚さの90%を占めています。

猫の角膜の構造 詳細図

引用:東福岡たぬま動物病院 http://www.tanuma-vet.com/ophthalmology.html

角膜上皮は常に新陳代謝を繰り返していて、傷ができても周りの細胞が傷をおおって治します。

角膜上皮は7日、角膜固有層(角膜実質)は2年かけて、細胞の入れ替わりが行われています。

一方、デスメ膜や角膜内皮は新しい細胞が再生して傷を治すことはできません。

小さい傷であれば細胞が拡大して傷を治しますが、大きな傷になると、他の結合組織が侵入してきて治すため透明性を失ってしまいます。 

 

角膜の役割

  • カメラのレンズフィルターのようなもので、外の光を取り入れる窓口です。
  • 外部からの細菌やウイルスの侵入を防ぐバリアー機能もあります。

 

角膜炎と角膜潰瘍とは

ここからは、角膜の病気の中でも代表的な『角膜炎』『角膜潰瘍(かくまくかいよう)』について、解説します。

『角膜潰瘍』は、白内障、緑内障と並んで、猫の目の三大疾病とされています。 

 

角膜炎とは、角膜上皮の表面が傷ついたり、細菌や真菌(カビ)に感染し炎症を起こしている状態をいいます。

それがさらに進行していくと、細菌が角膜を溶かす酵素を作り出し、角膜がただれてきます。

この状態が、角膜潰瘍です。

角膜潰瘍は、別名『潰瘍性角膜炎』とも言われ、進行のレベルに応じて、以下の段階があります。

 

潰瘍性結膜炎 段階図

引用:みなみ動物病院

表在性角膜潰瘍(角膜びらんともいう)

角膜上皮のみが傷ついて剥がれている状態(図2)

②深部性角膜潰瘍

角膜固有層(角膜実質)まで傷が進行している状態(図3)

③デスメ膜瘤(まくりゅう)

デスメ膜まで傷が進行し、眼圧におされデスメ膜がコブのように角膜の表面まで盛り上がっている状態(図4)

④角膜穿孔(かくまくせんこう)

角膜が破けて穴があいてしまった状態 

角膜と水晶体の間にある前眼房水が流れ出てくることもあり、失明する可能性が高いです。

 

次に、その原因と症状、治療についてみていきましょう。

 

原因

  • 砂やほこり、ゴミなどの異物が目に入った
  • 草木やケンカなどで、傷ついてしまった
  • シャンプーや逆さまつげなどによって刺激された
  • 涙が不足している(ドライアイ)
  • 細菌やウイルス、真菌(カビ)による感染
  • アレルギー
  • 高齢による角膜の再生不良

 

症状

  • 目ヤニが出ている
  • 涙が出ている
  • 目を大きく開けられず、細目をしている
  • 目が白く濁っている
  • 目が充血している
  • まぶしそうに、目をしょぼつかせている
  • 瞬きが多い
  • 痛みがあるため、元気がない

 

角膜の炎症は、大半の原因が外傷によるものなので、片目だけに症状が出ることが多いです。

 

治療

まず、傷の状況を調べるために、以下の検査が行われます。

 

傷の部位を調べる『フルオレセイン染色検査』

フルオレセインという蛍光の染色液を眼にたらします。

眼に傷があると、その部分が染色されます。

人間でも、眼科でこの検査をされることがありますよね。

 

傷の深さを調べる『スリットランプ検査』

スリットランプという機器を使って、細い光を目にあてて、角膜の断面をみます。

 

角膜潰瘍まで進行していなければ、フルオレセイン染色検査だけで十分なこともあります。

これらの検査の結果に応じて、治療方法が決められます。

 

傷が浅く、症状が軽い場合

刺激の原因となっているものがあれば、それを取り除く(逆さまつげの除去など)

抗生物質や角膜保護剤の点眼薬や、自己血清点眼(自分の血液から作る点眼薬)を投与する

点眼をはじめて3日以内に効果がない場合、長くても2週間以内に治らない場合は、刺激物がまだないかなど、原因が他にないか探る必要があります。

 

傷が深く、症状がひどい場合

外科的処置が必要になります。

傷の状態に応じて、眼帯代わりに、まぶたを縫う眼瞼縫合(がんけんほうごう)や、瞬膜フラップ、結膜フラップや角膜縫合などの手術を行い、修復を助けます。

手術は、基本的に潰瘍を治すことが目的で、角膜を透明に戻すことはできません。

 

ちなみに、症状が出始めてから治療が終わるまで、エリザベスカラーは必須アイテムです。

 

猫の場合は、最初は小さな傷でも、掻いたり擦ったりして、急速に悪化していきます。

そうなると、手術が必要になったり、失明する可能性も出てきます。

治療にも長い期間が必要になりますし、猫への負担も大きくなります。

 

猫の目の異変に気づいたら、すぐ動物病院へ連れて行くようにしましょう。

 

 

 

 

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