『歯周病』は猫が最もかかるリスクの高い病気です。
猫は3歳以上になると、その約8割が歯周病にかかっていると言われています。
近年では飼い猫が長寿化しているので、この傾向はさらに強まっています。
歯周病は口の中だけの炎症にとどまらず、心臓、肝臓、腎臓などといった他の臓器にも影響が出る全身性の疾患です。
健康な歯を維持すれば、他の臓器に対する病気の予防にも繋がります。
この記事では、猫の歯と歯周病について詳しく解説していきます。
猫の歯は、人間とはたくさんの違いがあります
まずは猫の歯について、基本的な知識を確認しておきましょう。
◆人間の歯は約28本ですが、猫の歯は30本あります。
猫の乳歯は26本ですが、永久歯では臼歯が4本増えて合計30本になります。
◆人間の口の中は弱酸性ですが、猫はアルカリ性です。
そのため、猫は虫歯にはなりにくいですが、歯石ができやすく歯周病にかかりやすいです。
◆猫も人間と同じで、一度だけ歯が生え変わります。乳歯が抜けて永久歯が生えてきます。
ただ、犬歯だけは乳歯の犬歯の隣に永久歯の犬歯が生えてきて、乳歯の犬歯が抜けた場所へ移動します。
乳歯が抜けずに残っている(乳歯遺残/にゅうしいざん)状態では、歯並びが悪くなったり痛みが出たり、歯周病が進みやすくなります。
歯が生え変わり始める生後3ヵ月を過ぎたら、歯の状態をこまめにチェックしましょう。
個体差はありますが、生後6~9ヵ月頃までには永久歯がほぼ生えそろうので、もしも乳歯が自然に抜けずに残っているようであれば、動物病院で抜歯をしてもらいましょう。
◆猫の歯は、切歯(せっし)、犬歯(けんし)、臼歯(きゅうし/前臼歯・後臼歯)に分かれます。
引用:@niftyペット http://pet.nifty.com/column/body/d140129000306/
切歯
前面にある小さな歯で、この歯を使って、肉をはがします。
犬歯
切歯の両脇にある長くとがった鋭い歯で、この歯を使って獲物をしとめます。
臼歯
口の奥にある歯で、人間の奥歯とは違い尖っています。この歯を使って、飲み込める大きさまで肉をちぎります。
生後6ヵ月頃に、ミックとジャガーもこのような乳歯が抜けました。
臼歯ですが、口を開けて抜けた部分は確認できませんでした。犬歯や切歯の乳歯は、気づかないうちにいつの間にか生え変わっていました。
多くの飼い主さんは歯が生え変わっていることになかなか気づけないようです。
それもそのはず、猫は抜けた乳歯の大半を飲み込んでしまいます。
猫は乳歯を飲み込んでも、特に体に問題はないので心配はいりません。
猫の歯周病とは
『歯周病』は、歯垢が溜まることで歯の周りの組織が炎症をおこし破壊されてしまう病気です。
段階によって、主に『歯肉炎』と『歯周炎』に分かれます。
◆歯垢(プラーク)
食べかすや唾液から作られます。
歯垢の7~8割が細菌で、歯茎の腫れや痛みを引き起こします。
歯磨きで取り除くことができます。
◆歯石
歯垢が石灰化してできます。
猫の歯垢は、およそ1週間で歯石に変わってしまいます。
歯磨きでは取り除くことができません。
歯石になると歯の表面がザラザラしてきて、さらに歯垢がつきやすい状態になってしまいます。
歯肉炎
歯垢に含まれる細菌が歯肉の周りに付着して炎症をおこし、歯肉の腫れや出血がみられるようになります。
この段階で歯垢を取り除けば、炎症は収まり健康な状態に戻すことができます。
歯周炎
歯肉炎を放置してそこからさらに進行した状態で、歯根膜、歯槽骨、セメント質といった歯肉以外の歯周組織にも炎症が広がります。
歯周ポケット(歯と歯茎の間のすきま)ができ、そこにも歯垢が溜まってきます。
腫れや出血の他に、膿や口臭、痛みを伴うようになります。
歯槽骨が溶けてなくなっていくと、歯肉が下がって歯が長く見えるようになります。
土台の歯周組織が破壊されてくるため、徐々に歯がグラグラして最終的には抜け落ちます。
歯周組織は一度破壊されてしまうと、治療をしても元の状態に戻すことはできません。
引用:田辺獣医科病院 http://tanabe-vet.com/fromclinic/010.html
猫の歯周病の主な症状
これらの症状に気づいたら歯周病になっていないか確認してみましょう。
- 口臭がする
- よだれが多い
- 歯が茶褐色っぽくなっている
- 歯茎が腫れて出血している
- 口を気にして足でかいたりする
- 噛んだり食べたりしている様子がいつもと違う
- 食べるのが遅くなり、食欲がなくなっている
歯周病の診断方法
・口の中の視診
歯肉の状態、歯垢、歯石の付き具合、口臭などをチェックします。
・歯周検査
麻酔をして、歯のぐらつき具合、歯周ポケットの深さ、レントゲン撮影などを行います。
・血液検査
猫エイズや猫白血病にかかっていないか、内臓に異常がないかを調べます。
・組織検査
何らかの腫瘍の可能性があれば、組織を採取して調べます。
歯周病の治療方法
・スケーリング
超音波スケーラーを使い、歯の表面の歯垢、歯石を取り除きます。
・ルートプレーニング
歯周ポケットに入り込んだ歯垢、歯石や、汚れたセメント質を取り除きます。
・ポリッシング
歯の表面を研磨することで滑らかにし、歯垢や歯石をつきにくくします。
・抜歯
歯周病が進行していて、歯のぐらつきや痛みがひどい場合に検討されます。
いずれの処置も、全身麻酔が必要となります。
予防法
歯周病の原因になっている歯垢を取り除くためには、歯磨きが最も効果的です。
■歯磨きの頻度
毎日がベストですが、3日に一度、最低でも1週間に一度は行うようにしましょう。
■歯磨きの方法
できれば、歯ブラシを使って行うのが一番です。
ただ、いきなり歯ブラシで磨くことは難しいと思いますので、段階を踏みましょう。
A:口を触られることに慣れさせる
ブラッシングや頭をなでる流れの中で、頬のあたりを、外側からモミモミしてみましょう。
B:歯や歯肉に触られることに慣れさせる
口を触られるのに慣れてきたら、口の中に指を入れて、切歯、犬歯、臼歯の順に徐々に触ってみましょう。
C:歯磨きに慣れさせる
まずは、指に歯磨きペーストをつけて、歯に塗ってみましょう。
慣れてきたら、綿棒やガーゼに歯磨きペーストやウェットフードの汁を塗って、歯を磨いてみましょう。
A~Cまでクリアできたら、ようやく歯ブラシを使った歯磨きを試してみましょう。
歯ブラシは、ブラシ部分が小さく毛質が柔らかいものが良いです。
歯ブラシを嫌がる場合でも、綿棒やガーゼ、歯磨きシートなどで出来そうであればそれでも構いませんが、乾いたままではなく必ず濡らしてから使用しましょう。乾いたまま使用すると、歯肉を傷つけてしまいます。
綿棒などでは歯ブラシのように歯の隙間の歯垢を取り除くことはできませんが、多少なりとも歯周病予防にはなります。
口の中に何かを入れられることさえも嫌がってしまう場合には、歯磨きガム等を検討してみましょう。(参考サイト:猫用グリーニーズ)
■歯磨きのコツ
・歯が生え変わる生後6ヵ月頃までに、歯磨きに慣れるようにしておくと理想的です。
・歯周病になりやすいのは臼歯で、特に唾液を分泌する唾液腺が近い上の臼歯に歯垢が溜まりやすいので、そこを重点的に行います。
・歯の表面だけでなく歯の根元や歯周ポケットにある歯垢まで取るためには、歯と歯肉の境に歯ブラシを45度の角度にあてて磨きましょう。
・抵抗しているのに無理強いをしたり大声を出したりせず、優しく声をかけながらおやつをご褒美にあげるなどして、歯磨きに良い印象を持たせるようにしましょう。
また、歯が生え変わる生後6ヵ月頃(避妊手術や去勢手術の際に合わせてでも)歯の検診を受け、その後は年に1~2回歯の定期検診を受診するようにしましょう。
昔は猫の寿命が短かったため、歯周病になる前に亡くなっていたので歯磨きをする必要はありませんでしたが、
現在では、飼い猫は平均寿命が延びており、歯周病になってしまう子が大半になりました。寿命の変化と共に、猫にも歯磨きは必要なものとなったのです。
歯磨きを嫌がるネコちゃんも多いですが、飼い主さんが大切な歯を守ってあげましょう。
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