ミックの抗がん剤治療が終了してから一か月以上が経ちました。
今のところ再発もなく、元気に遊びまわっています。
このブログではミックの胸にリンパ腫があることが分かってからほぼリアルタイムで治療経過を書いてきましたが、24記事もあるので全部読むのはちょっと大変かもしれません。
ここで一度リンパ腫の治療について分かりやすくまとめておこうと思います。
この記事に書いてあること
- 猫の縦隔型リンパ腫はどんな病気なのか
- 効果が実証されている治療方法
- ミックの闘病記
専門医の先生から教えて頂いた話や飼い主の私たちが体験したことを元に記事を構成しました。
私の理解の範囲で書いていますので、より専門的な情報を知りたい場合には腫瘍専門医の獣医師に直接尋ねてみて下さいね。専門医に聞くのが一番確実ですから。
猫の縦隔型リンパ腫とは
縦隔型リンパ腫(前縦隔型リンパ腫)は、胸の中(縦隔)にある胸腺と呼ばれるリンパ節にできる悪性腫瘍のこと。血液の癌(がん)とも呼ばれています。
若い猫に多く、縦隔型リンパ腫になる猫の80%がFeLV(猫白血病ウイルス感染症)陽性です。
ミックは典型的なパターンで、1歳10か月でFeLVの検査結果は陽性でした。
リンパ腫には他にも発症する部位によって「多中心型リンパ腫」「消化器型リンパ腫」「皮膚リンパ腫」などがあります。
歳をとった猫は「消化器型リンパ腫」になることが多いです。
免疫細胞であるリンパ球は全身を巡っているので、一か所で見つかると体の様々な場所で発症するリスクがあります。
癌化していない通常のリンパ球はウイルスなどの異物から体を守ってくれているのですが、癌化してしまうととても厄介なんですね。
リンパ腫を発症しやすい猫
FeLV(猫白血病ウイルス)に感染している猫は特に発症しやすいです。
FeLVの検査は生後6カ月を過ぎればできるので、一度受けておいた方が良いですよ。
感染し発症すると3年半で80%以上の猫が死亡してしまう恐ろしいウイルスなので。
FeLVの検査をして陰性であればワクチンで予防ができます。
また雄ネコやシャムもリンパ腫を発症しやすいと言われていますが、基本的にはどんな猫にも発症する可能性があります。
年間に10万匹中200匹の確率で発症します。
リンパ腫発症後の余命・生存率
リンパ腫は適切な治療を行うことでまれに完治(根治)することもありますが、ほとんどの子は完治には至らず亡くなります。
そのため完治ではなく寛解の状態を長続きさせることが治療目標になります。
低分化型リンパ腫の場合は進行が早いので、治療をしなければ余命は1~2ヶ月。
高分化型リンパ腫の場合は進行が遅いので、無治療でも数年生きる子もいます。
抗がん剤によく反応する子の場合は、1~2年以上生きる子も多いし、5年以上生きる子もいます。
しかし、完全寛解まで行っても再発してしまうと、その後は長くないことが多いようです。
動物病院のサイトなどでは「1年後生存率は○○%」という報告がよく書かれていますが、
ミックの主治医の先生によると「そもそもの症例サンプル数が少ない中で出された確率なので信頼性はない」とのこと。
人間の場合は数万例の結果から出した数字なので信頼できますが、動物医療ではそういうものはあまりないそうです。
T細胞とB細胞
リンパ腫にはT細胞とB細胞があるのですが、T細胞性リンパ腫の方が抗がん剤が効きにくく、予後が悪いとされています。
ミックは「T細胞性中等度分化型リンパ腫」という診断だったので「厳しいかも…」と私は思っていたのですが、
早期に完全寛解して、現時点で発症から8が月経っていますがとても元気なので、低分化型だからダメとか、T細胞性だから寿命がわずかというわけではなさそうです。
リンパ腫の原因と予防
リンパ腫の原因はまったく分かっていません。
そのため予防もできません。
FeLVになるとリンパ腫になりやすいので、FeLVの予防接種を受けることだけはできます。
縦隔型リンパ腫の初期症状
縦隔型リンパ腫は胸に腫瘍ができるので、それに伴う症状が現れます。
腫瘍が気管、食道、心臓を圧迫したり、肺に水が溜まったりすることで、以下のような症状が出ます。
- 呼吸が苦しいので、腹部だけでなく胸部でも呼吸をするようになる。
- 咳(せき)が出る
- 動くと苦しいので、運動量が減る
- 腫瘍が食道を圧迫するので、食べ物を飲み込みづらくなる
- 食べてすぐに吐き戻す
- 口で呼吸をする。かなり進行している可能性が高い。
ミックの場合は「左右の瞳孔の大きさが異なる」という症状が出ました。
ホルネル症候群と言って、腫瘍が大きくなり脊髄の神経を圧迫することで瞳孔の調節ができなくなっていました。
かなり巨大化していたのかもしれません。
縦隔型リンパ腫の診断方法
縦隔型リンパ腫が疑われる場合には、全身の検査をすることが多いです。
というのも、初期症状だけをみると他の病気の可能性もあるので、いろいろな検査をしてどこに原因があるのか詳しく見ていく必要があるんですね。
獣医師はまず飼い主さんからの問診を行います。
そして触診、聴診の他、検温、血液検査、レントゲン検査、超音波(エコー)検査、尿検査などでくまなく身体を調べていきます。
縦隔型リンパ腫の場合は、レントゲンで胸に白い影が映ります。
この時点で腫瘍を疑い、FeLV(猫白血病ウイルス)やFIV(猫エイズ)の検査を追加で行います。
それから、腫瘍に針を刺して細胞を採取し、顕微鏡でどんな細胞なのか確認をします。これを細胞診といいます。
ここでほぼリンパ腫だと判断できる感じですね。
どんなタイプの腫瘍か詳しく知るために、検査機関に検体を送って病理検査や遺伝子検査(クローナリティ解析)を行うこともあります。
その結果を受けて確定診断となります。
縦隔型リンパ腫の治療方法
縦隔型リンパ腫の治療には化学療法(抗がん剤治療)が行われます。
癌の種類によっては、外科手術で腫瘍を切除したり、放射線治療でがん細胞を殺したりするのですが、リンパ腫の場合はそういった治療はほとんど行われません。
というのも、リンパ腫はリンパ球が骨髄以外のあらゆる場所で増殖するものなので、一か所でリンパ腫が見つかると、他の場所にも広がっている可能性があります。一か所だけ切除しても安心できないんですね。
そのため抗がん剤を投与することで全身に効果を届かせます。
数種類の抗がん剤を組み合わせて投与する多剤併用療法を行うのが一般的です。
一種類だけの薬を使っていると癌細胞は耐性を持ってしまうため、複数の種類の薬を交互に使うことで耐性を持たせないまま癌細胞を殺すわけです。
縦隔型リンパ腫には抗がん剤が効きやすいと言われていますが、個体差が大きいです。
どの抗がん剤を使ってもまったく効果が出ない子もいるし、すぐに高い効果が出てどんどん腫瘍が小さくなる子もいます。
その子に抗がん剤が効きやすいかどうかは使ってみないと分かりません。
抗がん剤治療のプロトコール
抗がん剤治療には様々なプロトコールがあります。
プロトコールというのは「薬の投与方法」のこと。
使う薬の種類、薬を使う順番、期間、量など様々な組み合わせが研究されていて、その中でも効果が高いものがプロトコールとして医療現場で採用されています。
現在もっとも標準的とされているプロトコールが「UW-25」
ミックもこのプロトコール通りに抗がん剤を投与していきました。
5種類の薬を組み合わせて1週~2週間に1度の頻度で投与していく治療計画。25週間続きます。
使う薬は以下の通り。
・プレドニゾロン
ステロイドホルモン。最初の数週間だけ毎日経口投与します。長期間は使えないため、徐々に量を減らしていきます。
・L-アスパラギナーゼ
商品名はロイナーゼ。UW-25では最初の週のみに投与します。
・ドキソルビシン
アドリアマイシンとも呼ばれます。商品名はアドリアシン。リンパ腫に一番効果が高い薬。ドキソルビシンを投与する日は、半日~1日入院する必要があります。
・ビンクリスチン
商品名はオンコビン。注射で投与。
・シクロフォスファミド
サイクロフォスファマイド、サイクロフォスファミドなどとも呼ばれます。商品名はエンドキサン。注射で投与。錠剤で内服もできます。出血性膀胱炎の副作用があります。
UW-25では25週時点で完全寛解を維持していた場合、治療が終了となります。この期間を導入期と言います。
その後は1カ月おきに定期健診を行います。
再発してないかチェックするんですね。この期間は維持期間と呼ばれます。
再発が見つかったら再び抗がん剤治療を一から始め、再び完全寛解を目指します。
もう一度寛解することが多いですが、次の維持期間は短くなります。
再発を繰り返してUW-25の薬が効かなくなってきたら、レスキュープロトコールと言って別の薬を使って治療しますが、効果が出ないことも多いです。
引用元:北海道大学 動物医療センター
抗がん剤の投与は病院で行うので飼い主さんには通院の負担がかかります。
医療費も安くはないので経済的に苦しい方もいます。
その場合は、抗がん剤の種類を減らしてドキソルビシンという一番効果の高い薬だけを使ったり、安価なステロイド剤のみを使ったりすることもあります。
ただし治療効果は落ちてしまうので、長期の生存は望めません。
プロトコールについてはこちらの記事にも書いています。 続きを見る
猫のリンパ腫の抗がん剤治療のプロトコール。UW-25とNCSU。
抗がん剤の副作用
人間の抗がん剤治療では非常に苦しい副作用が出ますが、猫の場合は重篤な副作用が起こる確率は10分の1程度。
猫は人間や犬よりも抗がん剤の副作用が出にくいんです。
抗がん剤は激しく細胞分裂を行う細胞を狙って攻撃します。
癌細胞を攻撃しますが、悪さをしていない正常な細胞まで攻撃してしまいます。
激しく細胞分裂を行う正常な細胞(免疫細胞、上皮細胞、毛母細胞など)まで攻撃されるので、特定の副作用が起きてしまうんですね。
主な副作用は3つ。
①骨髄抑制の副作用
白血球や血小板が急激に減り、リンパ腫以外の病気にもかかりやすくなるので、猫が風邪をひかないように飼い主さんも注意しなければなりません。
毎回抗がん剤を打つ前には血液検査をして、白血球の数字や内臓の数字をチェックします。
その結果、あまりにも減ってしまっている場合には危険なので、抗がん剤の投与を延期します。
②消化器への副作用
食欲がなくなったり、嘔吐をしたり、下痢をしたりします。
抗がん剤と一緒に吐き気止めや食欲増進剤を投与するので、抗がん剤を打った日は元気なのですが、翌日くらいから徐々にこういった症状が出ることが多いです。5日くらい経つと抗がん剤の影響が小さくなり、食欲も徐々に回復します。回復しない場合には点滴で栄養を補給したり、食欲増進剤を使って元気になってもらいます。
ミックの体重は元々3.8kgくらいあったのですが、食べなくなって3.15kgくらいまで落ちました。
抗がん剤治療が終わって1か月以上経った今でも3.28kgで、食欲が完全に戻るには半年くらいかかる子も多いそうです。
何とか食べてもらうためにフードもいろいろ工夫をしました。 続きを見る
食欲不振の時でも食べてくれるキャットフード&手作りササミ
③毛への副作用
人間の抗がん剤治療と同じように、猫も毛が薄くなります。
といってもツルツルにはなりません。
ヒゲが全部抜けてしまったり、少し体毛が少なくなる程度ですね。
見た目にはあまり分からないし、命に関わる副作用ではないので、気にすることはありません。
副作用の出方はネコによって大きな差があり、ミックのように食欲がなくなる子もいれば、食べるけど吐きまくる子もいます。
膀胱炎になったり、下痢になる子もいます。
どの薬を使ったらどんな副作用が出るのかは、猫それぞれ。全然違うそうです。
抗がん剤治療では同じ薬を何度も使用するので、1度目に使った時にどんな副作用が出たのかしっかり確認することが重要です。
それによって2度目に使う時にはあらかじめ対応ができますからね。
副作用を抑えるには投与する薬の量を減らすのが一番簡単ですが、効果は激減していまいます。
たとえば、薬の量を2割減らすと、効果は半分以下になります。
そのため、副作用との兼ね合いを見ながら、ギリギリの量で調節する必要があります。
量を決めるのは獣医師なので、抗がん剤治療の経験が豊富な獣医師に任せたいですね。
ミックの場合は、毎回プロトコール通りの量で投与したそうです。
食べ物やサプリにはリンパ腫を改善する効果がない
よく免疫力が上がる食べ物が良いとか、DHAが良いとか言いますが、科学的根拠はゼロです。
食べ物でリンパ腫が良くなることはないし、効果のあるサプリメントや漢方もありません。
飼い主の愛情につけ込んで儲けを企む業者の言うことには注意しましょう。
ただし、栄養を摂ることは大切なので、食欲が落ちたときにはできるだけ好んで食べてくれるフードをあげるようにした方が良いですね。
一部の病院ではD-フラクション・イムダインなどのβグルカン製剤に食欲増進や免疫力の増強効果を期待して処方することがあるようです。
ミックにあげたことはないですが、Amazonでも購入できるみたいですよ。
抗がん剤治療中に飼い主ができること
飼い主さんは副作用がどのくらい出ているかしっかりと観察して、症状と日時のメモを残しておきましょう。
ちゃんと1日に必要なカロリーを摂取できているか、嘔吐はないか、便の固さや尿の色は問題ないかなどをチェックし、獣医師さんの問診の時に情報を共有することで適切な処置が行えます。
また気になる点があれば獣医師さんにどんどん相談してみましょう。
免疫力がギリギリまで下がっているので、非常に病気にかかりやすくなっています。
外に出すのはもってのほか。
空気感染も怖いので、窓を開けて外の風を浴びさせるのも極力控えましょう。
体温にも注意してください。
39度以上の熱がある場合には敗血症が疑われます。敗血症は命に関わります。
「食欲や元気がなく、体が熱っぽいな」と感じたらすぐに病院に行きましょう。
あとは猫にストレスを与えないこと。
これもすごく重要だと思います。
たとえ治らなかったとしても、幸せな時間を過ごさせてあげたいですからね。
抗がん剤治療の費用
抗がん剤治療では、抗がん剤だけでなく点滴も打ちます。食欲増進剤や吐き気止めが処方されることもあります。
血液検査やレントゲン検査などの検査費用もかかります。
必要な検査が多ければ多いほど医療費もかかりますが、一般的には1回の投与で1万円~3万円と言われています。
ミックの場合は、抗がん剤治療の総額が417,080円。
リンパ腫が見つかった直後から、UW-25プロトコールが終わるまでの総額は554,996円でした。
再発すれば再びこのくらいの費用がかかります。
元気なうちにペット保険に入っておけば良かった。癌になってからでは入れませんからね。
【ミックのガン闘病記まとめ】縦隔型リンパ腫の発見から抗がん剤治療終了まで
ここからはミックはどんな経過をたどったのか紹介します。
ミックのガン闘病記をすべて読んでいただければ超詳細にわかりますが、ここでは治療の流れをイメージしやすいようにかいつまんで解説しますね。
初期症状
一番最初に症状として現れたのは「食べづらそうにしている」ことでした。
ドライのキャットフードをいつもあげていたのですが、ちょっと様子がおかしかったんですよね。
食欲はあるみたいなんだけど、飲み込みづらそうにしたり、少し食べては休憩したり。たまに吐き戻すこともありました。
後になって思えばこれが一番最初の症状でした。
食べづらそうにしていること以外におかしな点はありませんでした。
呼吸も普通にしているように見えたし、元気よくジャガーと走り回っていました。生活リズムもいつもと同じ。毎日快便でした。
左右の瞳孔の大きさが違う(瞳孔不同)
それから2~3週間後、明らかに変化が現れたのは瞳孔でした。
写真の通り、左右の瞳孔の大きさが変わってしまったんです。
左目の瞳孔が光に反応しません。
慌てて病院に連れて行ったのですが、最初の診断は緑内障の疑い。
食べづらそうにしていることも伝えていたのですが、診て頂いた獣医師の先生の頭にはリンパ腫の可能性はまったくなかったようです。
レントゲン検査でリンパ腫が見つかる
しかし翌日になると、運動量が落ちて、呼吸を苦しそうにし始めました。
紐で遊んでいてもすぐに止まってしまうし、次第に呼吸の仕方も変わってきたんです。
普段は腹式呼吸でお腹が膨らんだりしぼんだりするのですが、この日は胸まで使って胸式呼吸をし始めたんです。
さすがにおかしいと感じて、再び病院へ。
緑内障と診断した先生とは違う先生に診て頂いたところ、胸部にリンパ腫が見つかりました。
胸水も溜まっていて、予断を許さない状況になっていました。
ミックは即日入院。
ここまでのお話はこちらの記事で詳しく書いています。 続きを見る
ミックの胸に癌が発見されました。最初の異変から検査までの全記録。
胸水を抜く&ステロイド剤を投薬
入院中は胸水を抜くこと、それから抗がん剤として使われているプレドニゾロン(ステロイド)を毎日注射。点滴も打ちっぱなし。
胸水は入院1日目までは出ていましたが、その後はストップ。
プレドニゾロンがとてもよく効いたようで、獣医師さんから「思ったよりも効果が出ています」と言われました。
今になって思えば、ミックは一番最初の抗がん剤から非常によく反応していたようです。
4日目には瞳孔も改善しました。
猫の眼科の専門医さんによると、瞳孔の症状はリンパ腫が肥大化し脊髄を圧迫したことによる「ホルネル症候群」だろうと。
プレドニゾロンによって腫瘍が小さくなり、神経への圧迫がなくなり、瞳孔が治ったんですね。
入院は4日間。その後は通院して治療することになります。
ここまでのお話の詳細はこちらの記事で。
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緊急入院中の治療内容と経過。瞳孔不同はホルネル症候群と診断されました。
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ステロイドに命を救われたミック。退院してからすごく元気になりました。
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転院して腫瘍専門医の元で抗がん剤治療を受けることにした
病理検査センターに送っていたミックの細胞を解析した結果、「T細胞性中等度分化型リンパ腫」と診断されました。
これから本格的に治療を開始するのですが、私は転院することにしました。
入院していた病院の主治医の先生はとても信頼できる方なので、そのままお任せしてもよかったのですが、私の自宅から通院できる範囲に腫瘍専門医の先生がいる病院があることが分かったんです。
しかも豊富な治療経験がある獣医師しか認定されないⅠ種取得者でした。
セカンドオピニオンをしてもらいにその病院に行って、腫瘍専門医のS先生とお話をさせてもらったのですが、
経験はもちろんのこと、人間的にも信頼できる方だと確信できたのが決め手でした。
というわけで、ミックの抗がん剤治療は専門医のS先生の元で行うことになりました。
専門医のセカンドオピニオンを受けて本当に良かったと思っています。
その時のお話はこちらの記事で。
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クローナリティ解析(遺伝子検査)の結果を受けて治療方針を決定。専門医のセカンドオピニオンも受けました。
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獣医腫瘍科認定医Ⅰ種取得者の一覧はこちらから見れます。勤務先の動物病院、連絡先、獣医師の名前が書かれていますよ。
プロトコールの1週目はとにかく不安
1週目の投与では抗がん剤が効きすぎて死亡してしまうリスクがあります。
実際に起こることはほとんどないそうですが、ゼロではないと。
なので、すごく心配しました。
運良く無事に終わってくれて一安心。1週目は副作用もほとんど出ず。
この時点でのレントゲン写真はこんな感じでした。
前縦隔が真っ白。これがリンパ腫の影です。
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ミックの抗がん剤治療1週目。抗がん剤の副作用に要注意。
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2週目から副作用が大きく出始めた
1週目の薬もすぐに効果が出ました。
S先生も「1週目としては効果が出ている」と。
しかし2週目のシクロホスファミドを打った後から食欲がすごく落ちました。
キャットフードをほとんど食べず、嘔吐も。
副作用ですね。
あまりにも食べないので点滴を打ちに2度病院へ行きました。
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ミックの抗がん剤治療2週目 抗がん剤が効いて腫瘍が小さくなった!!
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抗がん剤の副作用。食欲不振になり、病院で皮下点滴をしてもらいました。
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3週目 寛解目前まで腫瘍が縮小
抗がん剤の効果で、3週目の時点で腫瘍はかなり小さくなりました。
右側がプロトコールを始める前の状態。
左側は3週目の状態です。上からの写真ではほとんど健康な状態と同じ。
先生によると、丸2週間でこの状態になるのはかなり良い結果とのことです。
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ミックの抗がん剤治療3週目。なんと寛解が目前に!!
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4週目 レントゲン写真で肺の血管が見えるようになった
さらに腫瘍が小さくなり、レントゲン写真で肺の血管が確認できるようになりました。
右が3週目の写真で、左が4週目の写真。
腫瘍の影が薄くなって、薄っすら血管が見えますね。
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ミックの抗がん剤治療4週目。今日はちょっと怖いドキソルビシン。
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5週目 完全寛解
5週目にCR(完全寛解)となりました。
UW-25で使用する抗がん剤を一通り使ったところでレントゲンでは腫瘍が確認できなくなりました。
完全寛解と言っても完治ではありません。
レンントゲンには映らないだけで、癌細胞は残っているので、放っておけばどんどん増殖して再び腫瘍は大きくなります。
そのため完全寛解となっても、癌細胞を徹底的に殺すために25週目まではプロトコール通りに治療を継続します。
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ミックの抗がん剤治療5週目「どうやら寛解したっぽい」
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6週目 白血球数がギリギリまで減少
骨髄抑制の副作用が強くなってきました。
抗がん剤が打てるギリギリの数字。
食欲不振や嘔吐もずっと続いてるので、自宅でタイミングを見て食欲増進剤を飲ませていました。
ヒゲが床に落ちているのを何度か目にするようになったのもこの頃です。
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ミックの抗がん剤治療6週目 嘔吐は逆流性食道炎の疑い?
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7週目 副作用のイベント
6週目まではプロトコール通りに投与してきましたが、
白血球(好中球)の数字が下がり過ぎて、7週目の抗がん剤の投与が5日間延期になりました。
つまり6週目の薬を打ってから、12日間空けて7週目の薬を打ったということです。
これが初めての延期でした。
副作用が強すぎることが問題なのですが、先生によるとこれは良い傾向とも言えるそうです。
「副作用が出る=癌細胞が死んでいる」とも言えるため、投与を延期しなければならないくらい効果が出たということなので、むしろ喜ばしいと。
これは「副作用のイベント」と呼ばれていて、長生きする子はイベントが起こることが多いのだそうです。
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ミックの抗がん剤治療7週目 副作用のイベント発生。薬の投与が5日間延期に。
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8週目 さらに治療を延期
8週目も7日間では好中球が回復しなかったので、2日間延期しました。
2日延期した後の数字も悪かったのですが、先生の判断で打つことに。
延期を繰り返すことで治療強度(効果)が落ちてしまうため、今回はきついけど頑張ろうと。
ミックには耐えてもらうことにしました。
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ミックの抗がん剤治療8週目 白血球(好中球)の数が回復しない
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しかし、副作用はやっぱり大きくて、点滴と食欲増進剤を打ちに2回ほど病院へ行きました。
見た目にも元気がまったくなくなってしまいました。
この週がミックにとっては一番苦しかったかもしれません。
9週目 延期後にドキソルビシン投与
7日間では数字は戻らないだろうということで、最初から10日間空けて血液検査をしました。
その結果、白血球が戻っていたので投与。
毎週抗がん剤を打つのはこれで最後です。
次回からは2週間おきになるので、ミックの体への負担は減ります。
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ミックの抗がん剤治療9週目 2回目のドキソルビシンの投与
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11週目~13週目 副作用が弱まった
2週間おきの投与になってから、体調の良い日が増えました。
投与して1週間くらいは辛そうなのですが、翌週は元気に過ごせるようになりました。
毎週投与していた時とは明らかに変わりました。
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ミックの抗がん剤治療11週目 ビンクリスチン5回目の投与
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ミックの抗がん剤治療13週目 今週はシクロホスファミド
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15週目 突然の脱毛
ひと晩の間にあごの下の毛がごっそり抜ける謎の現象が起きました。
先生たちによると、これは抗がん剤の副作用で起こる現象ではないそうで、何が原因でこうなったのか真相は謎のまま。
とりあえず「リンデロン-VG」というステロイドと抗生物質の合剤を塗っておいたら回復しました。
抗がん剤治療が終わった今では、すっかり元通りになっています。
あと、ミックのヒゲが全部なくなったのもこの頃です。
髭は一気に抜けるのではなく、徐々に減っていった感じですね。
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ミックの抗がん剤治療15週目 副作用ではない謎の大量脱毛。一晩で顎の毛がなくなった。
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17週目 外耳炎になった
アゴの脱毛がひと段落したと思ったら、今度は外耳炎になりました。
妙に耳を痒がるので診てもらったらブドウ球菌が繁殖していて外耳炎になっていたんです。
抗がん剤の副作用で免疫力が低下しているところへ、梅雨の湿気が重なり、菌が繁殖してしまったと考えれるそうです。
外耳炎は「ウェルメイトL3」という耳の薬で治療しました。
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ミックの抗がん剤治療17週目 耳を痒がるなぁと思っていたら外耳炎になっていた
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19週目 耳の先端が折れ曲がった
外耳炎はウェルメイトL3で治ったのですが、今度は耳の先端が折れ曲がるという謎現象が起きました。
腫瘍専門医のS先生でも、抗がん剤の副作用でこんな症状になる症例は見たことも聞いたこともないそうで、原因は不明。
他の獣医師の先生にも聞いてみたのですが分かりませんでした。
完全に謎です。
現在はここまで曲がっていませんが、まだちょっとだけ垂れています。
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ミックの抗がん剤治療19週目 耳の先端が折れ曲がったのは抗がん剤の副作用?
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21週目~抗がん剤治療卒業
いろいろな症状が出たミックでしたが、21週目以降は順調でした。
食欲は戻らないので体重は増えないのですが、徐々に元気になっていることは分かります。
顔つきも良い日が多いし、運動量も増えました。
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ミックの抗がん剤治療21週目 元気になってきたけど、悪影響も蓄積している
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ミックの抗がん剤治療23週目 体重が減少して最低記録を更新。そしてミックが失禁。。。
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ミックの抗がん剤治療25週目 長かったプロトコールも今日で終わり。抗がん剤治療の費用全額を計算してみた。
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ミックの抗がん剤治療終了後の初検査。再発の早期発見や猫白血病のリスクについてお話を伺いました。
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こうしてミックは完全寛解を維持したままUW-25プロトコールの抗がん剤治療を卒業することができました。
治療終了後の一か月検診
一昨日の2018年10月10日に抗がん剤治療終了後の1か月検診に行ってきたのですが、問題なし。
念入りに触診、心臓の聴診、レントゲン写真を撮りましたが、再発の兆候は見られませんでした。
私たちは安堵しました。
無事にプロトコールが終わっても、再発の可能性はあるわけで、やっぱり怖い。
元気に見えるだけで、実は再発してるかもしれませんからね。
検査結果を聞くのは怖い瞬間でした。
3か月以降に再発する子が多いそうなので、来月くらいまではまだ大丈夫かな・・・と思ってはいるのですが・・・。
最近、くしゃみを度々していたのでそれも少し心配でした。
リンパ腫は鼻にもできます。
しかしS先生によると、猫白血病ウイルスを持っている場合には鼻にリンパ腫ができることはほとんどないそうです。なので、おそらく猫風邪だろうと。
鼻にリンパ腫ができる時の初期症状は「鼻水」「くしゃみ」からはじまり、「鼻血」、腫瘍が大きくなると「顔が変形」してくるそうです。
確率が低いとは言え、念のため注意しておきます。
また食欲は半年くらい経たないと戻らないかもしれないと。
薬は完全に体から抜けているのですが、影響は残ります。白血球の数字もだいたい食欲とリンクしているそうです。
ミックは外の風を浴びながら眺めるのが好きなんですが、食欲が戻るまでは1日10分くらいに制限しています。
長く外の風にあたると体に良くないですからね。油断大敵。
最近は寒くなってきたので、いろんなところにもぐりこんでいます。
毛もまだ増えてないので、風邪をひかないように注意しないと。
以上、ミックの抗がん剤治療について現在までの経緯をまとめました。
もっと詳しい話は各記事に書いてあるので、同じ病気で苦しんでいる飼い主さんの参考なればと思います。
頑張りましょうね。